ストロベリィ★ブラッサム\(^○^)/
〜いちご満開、恋まっさかり!〜







笑って許してくださる豪気な方のみ閲覧お願いしますシリーズ第二弾。
拙SS「パンと桜とデクノボウ」を先にご覧ください。
(第一弾は、めたぞう様のサイトにてお読み下さい! こんぺいとう)















みんながこいつの端正すぎる顔に騙されている、と吾郎は思う。
顔がちょっと―――いや、ほんとはちょっとどころじゃないけどさ―――良いからといって人格まで完全無欠の二枚目だと思い込んでいる。立ち居振る舞いからしてクールで優雅で、しゃべる言葉も英語はもとより日本語まで完璧で、その低くかつ甘い声で古文の教科書に載ってた恋の歌を朗読したらクラスの女子の約半分が卒倒したというとんでもない戦歴を持つ、ジェフ・キーンという男。

そう、みんな、このとんでもねえ詐欺師に騙されているんだ。

クールな外観を一皮剥けば嫌味でスケベったらしい笑いが貼り付いている。他に人が居ない時を狙って人のケツを鷲掴みしたりスカートを捲って「イチゴが見えない」とほざいたり、いきなり手を握って舐めようとしたり―――とんでもないエロワカメなのだ、こいつは!吾郎の憤りとキーンのいたずらは日に日に激しくなる一方で。

問題は、キーンがその本性を見せるのは吾郎と二人っきりの時だけだということ。他の奴にあいつが最悪のスケベ男だって訴えても、吾郎のいつもの冗談だと思われてしまうのだ。頼みの綱の寿也にまで「吾郎くん、やめなよ。わざとキーンくん貶して彼の気を惹こうとしてるように見えるよ」と注意されてしまった。日頃の行いのせいもあって、信用度においても吾郎はスーパー外国人転校生に完全に負けていた。


で、今。
吾郎は屋上でまたまた頭から湯気を出して怒っている。
吾郎の足元には、日だまりの中で穏やかな寝息を立てているエロワカメ。
もともとここは吾郎の昼寝ポイントであった。堂々と横取りされた形の吾郎は当然面白くない、このムッツリスケベは一体誰に断って人の場所に寝てやがるんだ、と切歯扼腕。キーンがこの場所の事情を知ろうが知るまいが、吾郎にとってはこの際問題ではないらしい。
ああ、何とかしてこいつに仕返ししたい、このスカしたツラが青くなったり赤くなったりするところが見たい!!
吾郎は何とは無しにポケットを探ると、サインペンが出てきた。よおーし、キーンのほっぺたにバカとかワカメとか書いてやる!と小学生レベルの悪戯を思いつく。
ニヤリと笑って、熟睡するキーンの体を跨ぐ吾郎。ご安心あれ、今日はちゃんとスパッツを穿いている。キーンにイチゴを見られたあの日から、毎朝のスパッツチェックは吾郎の絶対的習慣となっていた。
キーンのヘソあたりに腰をそっと下ろして、ペンのキャップを外した。左手にペンを握り、込み上げてくる笑いを堪えながらゆっくりと頬に近付ける。ああ、何て書いてやろうかな。どきどきワクワク。右手をそっと反対側の頬に添えたとき、そのひんやりとした感覚に心臓が違う意味でもドキリとした。


思い出した。
最初にキーンとぶつかったあの日の、キーンの肌の感触。
掌がじんと痺れるほどの冷たさ。それでいて滑らかで肌理の細かい皮膚。不思議な感触。接触した掌から、全てが奪われていくような気がした―――熱も、エネルギーも、何もかも。


今は瞼で隠された蒼い瞳。黙ってさえいればこれ以上綺麗なものなど存在しないんじゃないかって思えるほど整った顔、その中でもとりわけ印象的な瞳。その、蒼の中の蒼を見たいと思った。ここでお前の名を呼べば、瞼のシャッターを上げてくれるのかな。俺をその蒼い目で見てくれるのかな。
キーンに落書きするという目的が頭からすっかり抜け落ちてしまった吾郎の手は、キーンの頬からゆっくりと額へ移動。美しい稜線を描く眉を辿り、邪魔な瞼をそっと撫でて―――

「シゲノ」

唐突に呼ばれた。ギクリと身を竦ませて逃げようとしたが、すかさず自分より一回り大きな手に腕を掴まれた。こうなればもう逃げようがない。サインペンが力無く左手から転がり落ちていく。

「―――シゲノ」

キーンは目を開いていた。吾郎が見たいと希っていた蒼い宝石が姿を現し、清冽な輝きを放っている。そこにいつもの皮肉な笑いは微塵も無く、ただただ真摯に吾郎を見つめていた。

「…キーン」


なんの脈絡も理由も無く。
欲しい、と思った。
そして、求められている、と思った。



吾郎は体を傾け、キーンの唇に自分のそれを乗せた。瞬時、稲妻のような痺れが全身を走る。こいつの唇があまりにも冷たかったからだ―――と吾郎は誰に言うとも無く言い訳。唇をそっと触れ合わせながらも、キーンの蒼い瞳からは目を離さない。お互いに目を開けたまま、睫さえ触れ合いそうな距離で見つめ合う。

ああ、キスしちまった。
初めてのキスが男同士という異常事態に遭遇しながらも、吾郎は特に違和感を感じていなかった。
むしろその先に続く道への好奇心を抑えられない。
期待に体中を跳ね飛ぶ鼓動。
さあ、これからお前はどうしてくれる?

吾郎の心の声が聞こえたように、フ、とキーンの目が笑う。
キーンの舌が合わさった唇をちろりと舐めた。つられたように吾郎は口を少しだけ開けた。
何でわざわざそんな真似をしたのか、と後に吾郎は激しい後悔とともに頭を抱えたものだが、そのときの彼にとっては口を開けるのはごく自然の行動だった。例えは尾籠だが、トイレ中にノックされたら「入ってます」と答えるのが礼儀である、とまあ、そんな感覚で。

薄く開いた吾郎の口から侵入する無遠慮なキーンの舌。吾郎のそれを絡み取り、己の口腔へと誘い導く。キーンの冷たい肌と唇からは想像もつかないほど熱い口内、その柔らかく湿った場所。吾郎の体はびくりと揺れた。
吾郎の髪に指を差し入れ、口内を貪り食らうキーン。
熱が上がる、火傷しちまう、溶けちまう。
吐息すら奪われてがくがくと震える吾郎の体を抱き締めながら、キーンは微笑む。そんな顔して笑うとこ、初めて見た。もっと見せて、キーン、お前の優しい顔。
捕えられた舌をぎり、と噛まれた。痛ぅ!吾郎は思わず背を反らした。歪んだ吾郎の表情を宥めるように、キーンの冷たい掌が頬を撫でる。ああ、冷たくてキモチイイ。熱くて、冷たくて―――まるでお前みたい。

いつ終わるともしれない甘美な口吻に、いつしか吾郎は目を閉じてのめり込んでいた。




どれほどの時間が経っただろう。
吾郎の唇の外周をぺろり、と名残惜しげに舐め、キーンの唇と舌が離れた。キーンはそのまま立ち上がると吾郎から身を離し、ようやく解放されて呆然とへたり込む吾郎を冷静に見下ろした。

「寝込みを襲われた慰謝料代わりに貰っていく」

涙と熱でぼうっと霞んだ吾郎の視界。その向こう、キーンが手の中にあるものを誇らしげにかざしている。小さな布きれ?―――白地に赤い模様が散っている、どこかで見覚えのある…。

「いくらなんでもノーパンでは帰れないだろう、これは穿いておけ」

黒いものを投げて寄越された。ぱふん、と軽い音を立てて吾郎の目の前に着地する…スパッツ。
現実に頭が付いてこれない。吾郎は深呼吸しながらキーンの手の中にあるものをもう一度凝視する。そう、あれは、吾郎お気に入りの柄。よく見慣れたイチゴ模様…吾郎が穿いていたはずのパンツ。
キーンは満足気に笑うと、手をヒラヒラと振りながら踵を返して階段を下りていく。
ここでようやく吾郎は、自分のスカートの下が妙にスースーすることに気付いた。さっき、キスに没頭している隙に、このドスケベエロワカメは人の下着を…!!



「…パンツ泥棒!!!!!」



吾郎の限りなく悲鳴に近い怒声が、誰もいない屋上を虚しく響き渡っていった。







極めて遺憾なことに。
お気に入りのイチゴパンツをまんまと盗まれたことに対し、吾郎は今に至るまでキーンを糾弾できていない状態である。
だってそうだろう。キーンとこの事件について話し合うってことは、つまりキーンがパンツを何故獲っていったのかとか、今パンツがどこにあるのかってことを聞かされる羽目になるわけで。
この男が単に吾郎をからかうためにパンツを盗んでいったのならまだマシだ。もし、そうでなかったら…確固たる使用目的があって獲っていったとか、現在も有効活用中だとか、実はポケットの中に入れて毎日持ち歩いているとか言われた日には、一体自分が何をしでかしてしまうのか吾郎自身分からないからだ。

と、いうわけで。
今日も吾郎は真っ赤な顔でキーンを睨んでは、ヤマアラシよろしく全身の針を逆立てている。
キーンがそんな反応を織り込み済みで楽しんでいることも、未だ吾郎は知る由も無い。


















***************************************************

いろいろとあり得ませんがラブコメだからいいんです(えー
おぱんちゅ泥棒がやっと書けました、肩の荷を下ろした気分です!
こんぺいとう様リクエスト「おぱんちゅなキンゴロ」を思いっきり外したことは分かっておりますが
こんなんでよろしければ捧げさせてくださいませorz
めたぞう 2009.8.11





ようやく読めました・・・めたぞう様の「おぱんちゅキンゴロ」!
おぱんちゅ泥棒妄想をちょっとだけお聞きしたその日から。
めたぞう様の「おぱんちゅキンゴロ」が読みたくて読みたくて!!
で、ですが我侭を・・無理を言ってはいけない・・と思いながら
めたぞう様がおぱんちゅを書いて下さる日を密かにお待ちしておりました!
つ、ついにこの日が〜〜〜〜!!
もう、悶絶しながら読ませて頂きました!!
私もあのセクシーな声で、あの顔で、流暢な日本語で古文の恋歌を詠まれたら、卒倒する自信があります!!
あうう・・・・vv。
キーンの容姿の描写とか、キスシーンの描写とか・・とにかく美しくて・・・。
「欲しい」「求められている」
そう、吾郎に思わせるキーン、当然そのテクニックもあるかと思いますが
キーンも求めていたと、欲しいと思ったと・・信じて疑っていません。
互いに互いを求めていながらも素直になれない、そんな可愛い二人が微笑ましくてvv。
で!!
やっぱり気になるのは「おぱんちゅ」の使用目的vv。
「有効活用中」ですよね?ね??
毎日のようにきっと有効に使用していると・・・そんな妄想もまたvv楽しいですvv。
めたぞう様、素晴らしいキンゴロをありがとうございました!!
キーンのエロワカメっぷり、嫌味っぷり
そして全く気持ちに気付けていない吾郎、そしてキーンも(キーンは気付いている?のかな?)・・素敵でした・・・!!
タイトルを付けて下さった土方様、ありがとうございました!!
心より御礼申し上げます。
こんぺいとう  2009.8.18




戻る